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エディットお役立ちレポート

2016-05-19 第11期第1回AJEC「編集教室」に参加して

【講義内容】◎「新・編集者」 時代に合った新しい編集者像とは

講師:佐渡島 庸平(さどしま ようへい)氏
(株式会社コルク 代表取締役社長)

講演内容はAJECのアーカイブにてご確認ください

<感想>1

佐渡島さんの講演は、AJECでは二回目だ。まだ、起業後4年しか過ぎていないが、考え方が進化しているようだ。最近、『ぼくらの仮説が世界をつくる』(ダイヤモンド社/2015.12.11)を出されているが、その本の内容を踏まえての今回の講演。

佐渡島さんは、スマホの普及ということをとても重要な事態だと考えている。確かに、スマホは、一つのメデイアであると言うこともできる。前の講演のときのレポートでも書いたが、スマホを通じて、多様な情報に接するようになった時代は、「編集者の時代」でもある。集まる情報には、特別のものがあるわけではない。編成し直すことによって価値がでてくるということだ。

ある意味では、編集というのは、本をつくることではなく、情報をコントロールすることである。それが、IT時代の編集ということだと思われる。

上記の本の中に、「質を高めても売れない時代がやってきた」という章がある。その中で

<なぜ人は「練り込まれたプロの文章」よりも「友だちのくだらない投稿」のほうがおもしろいと思うのか?>

と自問自答するところがある。そこから、「おふくろの味」という言葉を思い出し、

<つまり「美味しさ」というものは絶対値があるわけではなくて、「関係性」の中で決まるのではないか。同じように作品の「おもしろさ」というものも絶対値ではなく、関係性の中で決まるのではないか、という結論に至りました。>

と書いている。ここから、だから、SNSの文章のほうがいいというのではなく、おもしろさというのは<親近感×質の絶対値>の「面積」だという。そして、コンテンツというのは、1次元の時代から、<親近感×質>とい2次元の時代になったという。これは、講演では話されなかったが、参考までに紹介する。

※この本はなかなかおもしろい内容なので、ぜひ読んで欲しい。今回の講演は、その中の一部を話しているという感じだった。

(文責:東京オフィス 塚本鈴夫)

<感想>2

佐渡島氏の自信に溢れた顔つきや話し方は、人を納得させるに十分だった。

佐渡島氏が代表を務めるコルクのような作家エージェンシーとはどのような業務をしているのか、と思っていたが、普段は編集プロダクション+所属作家秘書+作品のプロモーション展開を考える企業ではないかと考えた。今後、コルクのように作家エージェンシーは増えていくと思われる。

作家エージェンシーに類するものとしては、作家がつくった事務所「ラクーンエージェンシー(通称:大極宮)」(大沢在昌氏、京極夏彦氏、宮部みゆき氏の事務所)、「有限会社ライトスタッフ」(田中芳樹氏の事務所で天野頌子氏、小前亮氏などが在籍)、「有限会社未鏡アタットリー」(代表須藤貴之氏)などがある。

編集者がつくったエージェンシーとして直近で話題になったのが、KADOKAWA・MFグループ電撃文庫のカリスマ編集長だった三木一馬氏が立ち上げた株式会社ストレートエッジ(ストレートエッジは取締役の一人に三木氏の直属の上司だったKADOKAWA統括部長が据えられている)である。三木氏も佐渡島氏同様、作品を売るというスタンスではなく、原作を売るというスタンスを取っている。なお、ストレイトエッジ設立にあたっては、佐渡島氏の影響を多分に受けたとご本人も語られている。 (http://magazine-k.jp/2016/04/08/straightedge/

コルクの場合は、佐渡島氏が担当作家と一緒に独立したという流れだと思うが、講談社とは良好な関係は維持している。担当作家には、井上雄彦氏や安野モヨコ氏、伊坂幸太郎氏など、すでに成功していた作家が多い。このようなビジネスモデルに作家を巻き込んで事を為すという意味ではビジネスパースンとして目利きであると思った。

三木一馬氏のストレートエッジも自身の担当作家を連れて独立という形をとっている。ただし三木氏の場合は、電撃文庫編集長だったこともあり、鎌池和馬氏、川原礫氏、佐島勤氏、伏見つかさ氏などの作家は、下積み時代から二人三脚で成功してきたと感じているはずで、作家側の協力は得られやすい体制ができあがっているのではないかと思う。

今後も作家エージェンシー設立の流れは続くと思われるが、これがアメリカのように出版エージェンシーまで拡大発展するかといえば、「ない」と思う。

SNSをつかった発信力、広告の重要性などは、佐渡島氏が話されていたことと同じように感じていたが、顧客情報を駆使するということまでは思いいたらなかった。ただし、編集プロダクションがどこまで発信力、広告戦略、顧客情報をもつべきなのか、編プロがクライアント企業(版元)や読者に、声を届けるべきなのかということには触れられなかった。

個人的には、編集プロダクションも版元だけではなく、読者にも編集現場からの生の声を発信していくようなこともあってもよいように思う。

キュレーションが大事ということを話されていたが、これは確かにそのとおりで、これだけネットで情報が氾濫している世の中だからこそ、情報の整理整頓と目的に合わせた集約・編集を行うメディアは必須。そうしたメディアとしての役割が今後出版には求められているのかもしれない。ただし、目的に合わせた情報の集約・編集は、ややもすればニッチな商材にもなりかねず、採算という面で心配(というよりも、やりたいという気持ちはあっても、版元側の企画会議を通ることはないと思う)。

やはり何が売れるか、一般の人の興味がどこを向いているのか、情報を集める能力や敏感に感じ取ることのできる能力が、より必要になっているのだろう。

(文責:名古屋本社 福ヶ迫昌信)