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エディットお役立ちレポート

2016-05-19 第7回IT教育ソリューションEXPOに参加して

5月18〜20日に、国際展示場で、第7回教育ITソリューションEXPOが開催された。

私は、19日(木)に参加。まず、11時〜12時の早稲田大学総長・鎌田薫の講演「早稲田大学のグローバル化に向けた大改革」と13時〜14時の文部科学省生涯学習局情報教育課長磯寿郎の特別講演「教育の情報化の動向」を聴講してから、メイン会場とTFT会場で行われていた「みらいの学びゾーン学びNEXT」を見学した。

講演については、要旨をまとめ、最後に会場見学を含めて参加の感想を書く。

●基調講演「早稲田大学のグローバル化に向けた大改革」

講師:早稲田大学総長 鎌田薫

1 なぜ、今、教育か

少子高齢化により、経済成長が鈍化した。成長率を上げるには、一人一人の生産性を上げるか労働人口を増加しなければならない。教育負担が大きい日本では、労働人口を増加するのは不可能。従って、教育によって、一人一人の生産性を上げるほかない。

また、社会が大きく変化しており、

と言われている。そこでは、現在の職業を前提とした教育はもはや通用しない。

ということで、教育再生会議は、様々な提言をしている。そこで特に大学教育に期待されているものとして提案されているのは、@グローバル化への対応、Aイノベーションの能力を育てる、Bたくましさを育てる、C学び直しができる、D大学のガバナンスなどである。

早稲田大学では、これに応えて、これから必要とされる能力・資質を育てるために、ICTの活用などを通じて、アクティブラーニングに取り組んでいる。

2 「Waseda Vision 150」と早稲田大学における教育改革

「Waseda Vision 150」は、早稲田大学の戦略とプロジェクトのことである。(詳しくは早大のHP参照

@早大が育成を目指すグローバル人材
世界の中で活躍する「叡智+志+実行力」をもった人材育成をするために、特に、基礎的スキルの育成とリベラルアーツ(教養)の充実を図る。
A学生の交流の促進
学部生の全員留学の実現と、多くの交換留学生(早大は日本一で5000人の留学生がいる)を受け入れることで、国際化を図る。
Bグローバルリーダーに求められる資質の育成
そのために、少人数の問題解決型授業、体験型の授業、能力に応じた多様な授業、ICTを活用した授業、さらに教職員のグローバル化対応能力の向上を図る。(但し、話をきいていると、多少過保護のような気がした)

3 早稲田大学におけるICTの活用

@アクティブラーニング
個人的には、既に法科大学でアクティブラーニングに実践をして有効性を確認していたので、これを早大にも取り入れる。特に、反転授業(fliped classroom)の予習や復習には、Webの活用は有効である。
A大学総合研究センターの設立
大学教育のあり方やWeb版クリッカーの活用などを研究している。
Web版クリッカーとは、学生にPCやスマートフォンから指定のURLに接続して回答させるシステムである。従来型の専用端末を用いたクリッカーと比べると、端末の配布や回収の手間が不要になる上、選択式回答のみならず自由記述での回答も可能になる点がメリットだといわれている。
オンデマンド授業や学習支援システムの充実を図る。
B大学授業のオープン化
今は、教育にとって明治維新に匹敵する時期であり、大隈重信が掲げた早大の建学の精神(志)が問われている。

●特別講演「教育の情報化の動向」

講師:文部科学省生涯学習局情報教育課長 磯寿郎

内容は、以下のとおり。

今回特に強調されていたのは、ICT化が進む社会への対応力の育成として、「情報活用能力の育成」として、学校の授業の中で、高校での情報科学の必修化や、小学校からのプログラミング教育などが2020年から実施される学習指導要領の改訂の内容になっていることだ。

情報教育は、

などを育てることだが、今後、社会の情報化の一層の進展によって、地域の偏りがあるとは言え、@授業におけるICTの活用、A校務の情報化、B地域×学校×ICTの推進が進んで行く。

文科省は、ICT環境整備のために、平成26年〜29年まで単年度1,678億円の地方財政措置を計上し、第二期教育振興基本計画の目標値として、

とのこと。

デジタル教科書については、ほとんど触れられなかった。(生涯学習局情報教育課の課長であり、教育課程課のことは避けていたようだ)しかし、2020年からデジタル教科書が導入されることにほぼ決まっており、これに対応した端末(おそらくタブレット型PC)の普及がどうなるかが、今後の学校教育におけるICTの環境の影響を与えると思われる。場合によっては、急激に変わるかも知れないし、現在とほとんど変わらないかも知れない。

■聴講と展示ブースを回って

今年は、昨年より、少しおとなしい感じだった。既に、教育の動向として、2020年の学習指導要領の実施のときには、電子教科書が実現して、小学校でもプログラミング教育が行われたり、IT機器のさらに多く導入されたりするという流れが定まっていたからかもしれない。

鎌田総長の話にもあったが、アメリカのデューク大学のデイビッドソン教授の予想だと、今年小学校に入る全世界の子どもたちの65%が、将来、いまはまだない仕事につくらしい。つまり、15年後には、産業の構造がいまとは大きく変わっていて、それがどんな事態なのか、明確には分からないということになる。だから、今の時代に合った、学力ではなく、15年以降の未来に役立つ学力でなければならないというのが、現在の教育課題であるわけだ。

ただ、「スーパーグローバル」などという文科省や大学の取組は、確かに多様な取組となって現れているが、ある意味では、世の中の情報化の進展に合わせて変化ということでもある。むしろ、学生に対してたあまりの手取り、足取りの指導の仕方が、学生たちのたくましさを奪っていることもありそうだ。

また、現在の政治状況を見ていると、今年どうなるのか、来年はどうなるのかというのが政治課題になっていて、教育でさえそうした流れに巻き込まれているような気もする。もともと、教育は、100年後というところまでは行かないとしても、もっと長期的な展望のもとに設計しなければならないのだが、実際にはそれは、不可能に近い。

教育のITソリューションというのは、それの一つの答えだというのがこのEXPOのねらいのようだ。勿論、ITテクノロジーの進化や、情報や学習の基盤であるメデイアが、紙の本から、タブレットPCなどのコンピュータになるということから考えると、いま、大きな変化の中にいると言える。これは、実は、教育だけのではなく、あらゆる産業についても言えそうだ。


そういう目から、会場を回っていて、新しい提案として興味を惹かれたことをピックアップする。

@UDフォントをモリサワがPRしていたこと
UDフォントと言えば、既に、Windowsでは、メイリオというフォントが使われていたり、スマホでは、いろいろなフォントが工夫されていたりする。モリサワは、デジタル教科書を表示する目に優しいフォントとして、UD教科書体を展示していた。こういうフォントは、端末などにあらかじめインストールされるようになるといい。
Aデジタルナレッジが、教育のビッグデータの処理の提案をしていたこと
まだ、教育のビッグデータが、人工知能とのリンクするわけではないが、デジタル教材による指導の結果、自動的に蓄積されてくるデータ処理が課題となってくる。現在の校務ソフトなどでは、まだ、成績などは手入力だが、デジタル教科書と教材が普及してくると手入力では処理できなくなってくる。
B人工知能と教育
会場の中央入口では、ソフトバンクの人工知能ロボット・ペッパーが出迎えてくれた。会場のあちこちで、グーグルのアルファ碁のことが話題になっていた。いずれ、人工知能によって、問題作成や教育課題の分析などということもできるようになるかも知れない。紙の本から、スマホやタブレットがメディアになるということは、メディア自体がコンピュータになると言うことでもある。そして、これがWebと連動して何ができるかは、まだまだ未知の世界があるようだ。
CInternet of Things(IoT)ということ
未来の学び方として、プログラミングや3Dプリンタなどの展示をして、ものづくりとIT教育を結び付けていた。ものづくりの仕方が、いま、大きく転換しようとしているのかもしれない。小学校では、ものづくりと言えば、大抵手作りということだが、それがプログラミングを使って、3Dプリンタを使ってというように変化してきている。

これらは、教育だけのことではなく、私たちの生活に関わって大きく、影響を持ってきそうなものだと思った。

(文責:東京オフィス 塚本鈴夫)