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エディットお役立ちレポート

2018-01-18 2018年AJECデジタル部会勉強会に参加して

【講義内容】◎2018年デジタル教材制作の最新情報

講師:高野 勉(たかの つとむ)氏
東京書籍 株式会社 教育文化部教育事業本部副本部長

高野さんの講演のアジェンダは、以下のものです。

■2020年デジタル教科書の発行と編集プロダクションの課題

いよいよ2020年からデジタル教科書が発行されることになります。しかし、現段階でもいまだ未定の部分があり、多少流動的なところがあります。

特に、制度的な問題として、@デジタル教科書の採択の仕方、A供給方法、B価格/定価、C障害のある児童生徒に対する配慮、D著作権処理の問題などを含めて、多少の方向は出ていますが、まだ決まっていないことが多くあります。

1)文部科学省の決定と方向について

文部科学省のHPに、最も新しい資料として「『デジタル教科書』の位置付けに関する検討会議の最終まとめ【概略】 」がアップされています。

その資料の「デジタル教科書の内容・範囲」によれば、まだデジタル教科書が使われたことがないので、「デジタル教科書の使用による効果・影響について、客観的・定量的な検証は困難」なことから、次のような配慮を提案しています。

こうしたことから、「紙の教科書とデジタル教科書のいずれかを選択して使用する『選択制』の仕組みの導入については、教育上の効果や健康面への影響等に関する調査研究等の結果等を見極めながら、デジタル教科書の導入後、一定の期間を経た後に改めて検討を行うことが適当」とされています。

つまり、当面は、紙の教科書とデジタル教科書は併用ということになります。あくまでも、紙の教科書が基本で、そのうえで、学びの充実のためにデジタル教科書を使ってもよいと位置付けられています。

現段階で決まっていることは、おおむね下記のようなことです。

2)教科書及びデジタル教科書からリンクされるデジタルコンテンツについて

ところで、東書の高野さんのAJECの講演で、このデジタル教材の性格について次のような指摘がありました。

ということで、教科書の検定申請時に、各コンテンツの内容を適切に示す代表画面イメージを提出ことになっているそうです。

こうしたことを考えると、2020年から発行されるデジタル教科書というのは、たとえばAmazonで販売されている、紙の本と同じ内容形式の電子書籍のようなものをイメージすればよいと思われます。

3)デジタルコンテンツの内容とは

また、高野さんの講演は素晴らしい講演でしたが、内容が多様ですべてを取り上げることは困難ですので、内容を私なりに咀嚼し、編集プロダクションにとっての課題として、次のようなことを考えてみました。

まず、紙の教科書やデジタル教科書からリンクするコンテンツ(デジタル教材)というものがどうなるかということです。 デジタル教科書からリンクされているところにある教材は、当然にもデジタル教材です。また、それは紙の教科書からもリンクをたどっていくことができるものになります。こうした、教科書会社のサーバーにある、デジタル教材(デジタルコンテンツ)は、現在教科書会社が発行している「デジタル教科書教材」とどのように関係しているのかという問題でもあります。

おそらく、シミュレーションや拡大図・写真、参考資料などがコンテンツの内容になると思われますが、「学習上不可欠なものであってはならない」と言われていることから、一定の限界があります。 実際は、デジタル教科書ができた時にはっきりすると思いますが、「ドリル」とか「テスト」とか「資料集」というようなものは、リンクの対象にはならないと思われます(なぜなら、有料コンテンツにリンクは貼れないはずだから)。

現在のデジタル教科書についている、「ドリル」とか「評価テスト」とか、「資料集」のようなものは、別途販売するいわゆる「デジタル教材」となるものと思われます。もちろん、無料でもかまわないので、添付するという発想はありえます。 しかし、こちらは、現在発行されている教材会社の教材のデジタル化という問題と一緒で、いろいろな問題がありそうです。  

4)デジタルコンテンツの制作上の課題

現在のデジタル教材は、Adobe FLASHを使って作られているのが普通です。しかし、これは2020年にサポートが終了します。しかも、現在一部ブラウザでは見られません。したがって、今後、デジタル教材は、HTML5とJavaScriptで作らなければならなくなると思われます。そして、端末のブラウザで見られることが原則になるようです。

ただ、今後、端末が多様化し、ノート型PC、タブレット、スマートフォンなどになり、OSやブラウザが多様になると多少動作が不安定になったり、構成ファイル数が多くなったり、著作権上保護が難しくなったりする可能性があります。

単純にFlashのコンテンツをHTML5+JavaScriptに変えただけでは、問題がありそうです。また,「HTTPS」対応も主流となると思われます。「HTTPS」は、Hypertext Transfer Protocol Secureの略で、HTTP通信の時、認証や暗号化などを行い、より安全な通信ができる仕組みです。

また、インターネットに接続できない環境での利用はどうするのかという問題もあります。コンテンツをダウンロードして、端末に保存できるのかどうかです。そのうえ、クラウド前提のOS端末、ChromebookやWindows10S等は、その場合どうするかという問題にもなってきます。この辺は、これから、学校現場でどんな端末が主流になるかによってかなり流動的です。

さらに、いままでのデジタル教材の場合は、教師中心で、インストールなどは業者がしてくれていたりしていましたが、今後は、教科書会社のサーバーにコンテンツを置いておいて、学校や自宅などで自由に自分の端末でアクセスするようなコンテンツも増えていき,利用者が普通の教員や児童生徒になります。もっとも、ゲーム慣れしている子供たちのほうが、うまく使うかもしれません。

どちらにしても、教科書からリンクされる教材だけでなく、もっと広いデジタルコンテンツを制作・運用するためには、内容面の企画・デザインと、それを実装する技術が必要になってきます。また、技術面については、技術者の開拓、確保は当然としても、テスト技術者が必要になってきて、どのような環境でも使えるかどうかをチェックする必要がありそうです。

デジタルコンテンツの内容面としては、新しい学習指導要領のポイントである「主体的・対話的で深い学び」、つまりアクティブ・ラーニングの可能な内容になっているかが問題になってきます。また、デザイン面では、PC、タブレット、スマートフォンなど多様な端末に対応し、「マニュアルレス」「ユニバーサルデザイン・インターフェース」「バリアフリー・インターフェース」などを考慮する必要があります。

技術面では、Adobe Animate CCを活用して、出力時にHTML5ファイルにしたり、Android、iOS、Windowsなどの複数のOSに対応したクロスプラットホーム開発(electron, NW.js)をしたり、Web3D、WebPackなどを利用してファイル数を減らす工夫(ログの減少)をしたりすることが必要になってきます。

こうしたことは、教科書会社だけではできませんし、専門的な技術者や企業との共同作業になってきます。編集プロダクションも、そうした企業との連携や、あるいは自社での技術者の養成が必要になってくるかもしれません。特に、今後、すべての面でデジタル・ファーストになってきますと、実装技術を外注するにしても、技術の現状や可能性の知識は必須になってくると思われます。

いずれにしても、もう少し、デジタル教科書の発行とその周辺事情については、注意を怠らないようにし、常に最新の情報を入手しておく必要があると思われます。そして、新たな事態に対して、すぐ対応できるようにしておくことが、編集プロダクションの生き残る道でもあると思います。

(文責:東京オフィス 塚本鈴夫)