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エディットお役立ちレポート

2021-4-16

第11回「コンテンツ東京」と第1回「XR総合展」に参加して

 4月14日~16日の3日間、第11回「コンテンツ東京」(第11回ライセンシングジャパン、第9回映像・CG制作展、第5回広告デザイン・プランディングEXPO、第7回コンテンツマーケティングEXPO、第10回クリエイターEXPO、第7回先端デジタルテクノロジー展)と同時開催で、第1回「XR総合展」が東京ビッグサイト南展示棟で開催されました。私は、16日の最終日に参加しました。

 今回は、三つのセミナー(特別講演)を中心に参加しました。一つは単独講演で、二つは三人の鼎談でした。それぞれに講演者と講演内容について簡単に紹介します。最初の二つが『コンテンツ東京』の特別講演で、最後の鼎談が「XR総合展」の特別講演です。多分、どんな人たちが登壇していて、どんなことを話していたかたということが、今回の「コンテンツ東京」と「XR総合展」の内容の理解にいちばん近づけるのではないかと思います。

●コンテンツ東京特別講演①ライセンス業界の最新動向

「ライセンス業界の最新動向2021~2020年旋風を巻き起こしたあのコンテンツのヒットの要因と、最新のライセンシング動向を語る!」

(株)キャラクター・データバンク代表取締役

(一社)キャラクターブランド・ライセンス協会専務理事
陸川 和男

 陸川さんは、広告・マーケティングの専門誌の編集者、マーケティング会社の研究員などを経て、2000年7月に(株)キャラクター・データバンク(CDB)を設立。CDB事業の統括をおこなうかたわら、キャラクタービジネスのアナリストとして、TV・ラジオ・新聞・雑誌などのコメンテーターや執筆、講演活動などもおこなっています。また、2002年7月には、世界最大のランセンス協会LIMA(国際ランセンシング産業マーチャンダイザーズ協会)を日本に誘致し、LIMA日本支部を設立。また2014年には(一社)キャラクターブランド・ライセンス協会の設立にも参加されました。

  1. コロナ禍におけるキャラクター商品市場の現状

    キャラクタートレンド調査というモニター調査の結果は次のようになっています。

    • 大都市は、厳しい状況。キャラクター商品は、人流が増加すると伸びる。
    • 「鬼滅の刃」「すみっコぐらし」が伸びた。
    • 5~19歳のシェアが大きい。ゲームキャラが上位を占めている。
      • → 男子は、「スーパーマリオブラザーズ」、「鬼滅の刃」が伸びている。
      • → 女子は、「鬼滅の刃」、「すみっコぐらし」が伸びている。
    • キャラクターのトップは、玩具。出版も伸びた。ECサイトでの販売が伸びた。
  2. 市場を牽引したIP(Intellectual Property=知的財産)のビジネス

    日本キャラクター大賞2021のキャラクターライセンス賞の受賞プロパティ

    1. 「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」
    2. 「ディズニー ツイステッドワンダーランド」
    3. 「TVアニメ『呪術廻戦』」
    • 「鬼滅の刃」と「呪術廻戦」は男女ともに支持があり、「ツイステ」は9割以上が女性で、女性は16~19歳が多い。
    • 「鬼滅の刃」は玩具と出版、「呪術廻戦」は出版とデジコン、「ツイステ」はアクセサリーと出版
    • この三作の今後の動向に注意。
  3. 「鬼滅の刃」のビジネス構造
    • なぜこんなに社会的な現象になったのか不明で、今後の解明に期待。
    • 「鬼滅の刃」の出現の順序
      • → 2016年 少年ジャンプで登場
      • → 2019年 登場3年後にアニメ化
      • → 2019年 動画配信で話題になる
      • → 2020年 巣ごもり状態で家族と見ることにより社会現象化
  4. 2020年のキャラクター商品市場から見えた新たな現象
    1. キャラクター商品市場はコロナ禍のなかで健闘

      ──巣ごもり需要×キャラクター(癒やしや活力)により縮小幅が最小限。定番キャラが縮小し、多様化。

    2. 鬼滅のヒットに見られる逆流

      ──「動画配信→コミック→少年ジャンプ」というこれまでとは逆の流れ。“深夜アニメ”の概念も崩れ、幅広い商品化にも成功。

    3. 子ども市場(ファミリー市場)の変化

      ──キャラクターを中心にしたシリーズ作品が苦戦するなかで、「鬼滅の刃」のようなストーリーものも受容。

    4. ゲームIPの可能性

      ──コロナ禍の中で、オンラインと親和性の高い “ゲーム” IPが好調。IPの積極的な運用も見られる中で今後の動向に注目。

    5. キャラクター商品のEC化の流れ

      ※急激なDX化の流れの中で、ECや実店舗のあり方を含め、キャラクタービジネスの構造が変わりつつある。

  5. 今後の動向
    • Withコロナのコンテンツビジネスとしてはオンラインイベントの活発化。
    • Z世代(15~20代)は、リアルでなくても何か価値があれば高くても売れるし、オンラインに抵抗がない。
    • コロナ後の変化として三つの「間」を考える(時間、空間、人間)。

      →時間としては生活時間のマネジメント、空間としては自然志向、人間は社会性欲求などを考える。

    • 今後を読み解くキーワードとしては、「オンライン同期」「ライブ性」「新しい家族基準(お茶の間の復活)、「オンラインとリアルのハイブリッド」など。

      →仲間と同期しながらコンテンツを楽しむ、コンテンツを家族内で共有する(スマホを通して)、オンラインとリアルのハイブリッドなどは、Afterコロナになっても続く。

●コンテンツ東京特別講演②テクノロジーがコミュニケーションを変える!

「最新テクノロジーが実現する新たなコミュニケーションとは?」

(株)ワントゥーテン代表取締役社長・澤邊芳明

avatarin(株)代表取締役・深掘 昴

(株)gumi取締役会長・國光宏尚

▶ワントゥーテン(https://www.1-10.com/)という会社は、社員180名ほどで、最先端テクノロジーを軸に、デジタル技術を駆使した新サービスの開発や、プロジェクションマッピング・XRなどを活用した商業施設やイベントのデジタル演出などをおこなっています。

 2018年1月におこなわれた東儀秀樹出演の「源氏物語音楽絵巻〜儚き夢幻〜」でのデジテル映像表現、また7月におこなわれた市川海老蔵出演の「歌舞伎座百三十年 七月大歌舞伎 夜の部 『通し狂言 源氏物語』」でのイマーシブ(没入型)プロジェクションなどに見られる、日本の伝統文化と先端テクノロジーの融合によるアート活動のMixed Arts(複合芸術)プロジェクトや、夜の旧芝離宮恩賜公園を活用した紅葉ライトアップイベントの総合演出、パラスポーツとテクノロジーを組み合わせた新しいスポーツエンタテインメントのCYBER SPORTSプロジェクトなど、多くの独自プロジェクトも進行しています。
(facebookより)

▶avatarin(https://avatarin.com/)は、ANAホールディングスの事業会社で、2020年4月創業の会社です。「物理的距離と身体的幻景をゼロにする」ことを、アバター(ロボット)を社会的インフラにして、全ての人の新しい能力を拡張にするために追求しています。

「世界中に、そして、宇宙に設置されたアバターに入り込むことで “瞬間移動” を可能にする「アバターイン」は移動を換え、教育を変え、医療を変え、ショッピングを変え、エンターテインメントを変え、人類の生活にまつわる、ありとあらゆることを変えて行く」というのが、avatarinの企業の目標だそうです。

▶gumi(https://gu3.co.jp/)は、グループで200億円ほどの売上がある上場企業です。昨年の「コンテンツ東京」のレポートで触れました。モバイルオンラインゲーム事業、XR事業(VR、AR、MR等)、ブロックチェーン事業などを展開し、最近は自社タイトルの『ファントム オブ キル』『誰ガ為のアルケミスト』や、スクウェア・エニックスと共同開発した『ファイナルファンタジー ブレイブエクスヴィアス』で有名です。

 澤邊さんも、深掘さん、國光さんも、XRに可能性を見いだし、仕事の中で、その可能性を追求している人たちです。澤邊さんは、市川海老蔵主演の3D歌舞伎を作成し、デモを見せてくれました。今後、みんなが見られるようにするとのこと。深掘さんの「遠隔操作ロボットを使った社会参画」という発想は面白いと思いました。深掘さんのアバターは、とても面白いロボットで、人型をしていない。どこにでもおけるのがいいのかもしれません。(詳しくは、深掘さんの会社のHPを見てください)國光さんは、Oculus Quest2の販売に伴う、新しいVXゲームなどの開発・供給に意欲的です。國光さんによれば、Quest2が229ドルで発売されたことは一つの転機になるかもしれないとのこと。VRの普及は、安価なVR機器の普及次第だそうです。また、デジタルアートが盛り上がっているとのこと。「ブロックチェーン上に置くとコピーができない。オリジナル性が保障される」と言っていました。人は、ピュアなデジタルデータに価値をおけるかというのは、問題になりそうです。

●XR総合展特別講演XRがもたらす可能性とは?

「XRがもたらした現実とバーチャルの複合世界で私たちの社会・生活はどう変わるのか?」

(株)ドワンゴ顧問・川上量生

(一社)XRコンソーシアム代表理事・藤井直敬

(株)iU(情報経営イノベーション専門職大学)学長・中村伊知哉

▶ドワンゴ(https://dwango.co.jp/)といえば、ニコニコ動画を思い浮かべますが、KADOKAWAと提携した、N高等学校やN予備校も有名です。N予母校は、「スタディサプリ」と似ていますが、こちらは月額1,100円でVRを利用することに特徴があります。ただ、VR学習をするためには、Oculus RiftやQuest2が必要になります。それでも、面白い試みで、大学受験、プログラミング、Webデザイン、動画クリエイターなどの講座があります。第15回「日本e=Learning大賞」で、文部科学大臣賞を受賞しています。
▶XRコンソーシアム(http://xrc.or.jp/)は、日本のXR業界(VR/AR/MR)の代表団体です。代表理事の藤井直敬さんは、ハコスコ代表取締役でもあり、デジタルハリウッド大学の教授でもあります。ハコスコ(https://hacosco.com/)とは、いつでも手軽にVR体験ができることを目的に、いろいろなソリューションを提供している会社です。
▶iU(https://www.i-u.ac.jp/)は、正式名称を「iU情報経営イノベーション専門職大学」といい、中村伊知哉さんはそこの学長。慶応大学教授だったころは、教育のIT化のために尽力され、教育のICTの業界では有名人で、講演には羽織袴で登壇することでも有名です。

 話の展開は、まず、藤井さんから、XRの定義。「XRとは、VR(バーチャルリアリティ:仮想現実)から始まり、AR(オーグメンテッドリアリティ:拡張現実)、MR(ミックストリアリティ:複合現実)と言われる現実の認識に働きかける技術分野」を総称した名前だそうです。いわば○○Rというところの○○をXとしたわけです。 川上さんが、「人間は、もともと、脳が情報処理したデータしか見ていない。その人間が、デバイスを介して世の中を見るようになって、AIとXRとセットとして活用し、大きな変動がおきている」と言っていたのが印象的でした。

 藤井さんも、「脳をいかにだまして、介入していくか。それにより、世の中をどう見せるかがポイント。AIもXRも対象にしているのは、脳。子どもはAIもXRも当たり前の補助道具とみなしている」ということを強調されていた。

中村さんは、「脳、人類、データなど、XRはあらゆる社会の分野に浸透している」ということで、新しく創立されたiUで活用していきたいと言われました。中村さんによれば、学生たちはコロナ禍でも学校には来たいようですが、授業はZoomなどの授業のほうが分かりやすいと言っているようです。 しかし、VRは、少なくとも家に1台機器がないとなかなか普及していかないというのが共通の認識。そういう意味では、「ハコスコ」は画期的。Quest2は4万円近くもするが、『ハコスコ』は5千円くらいで買えます。いろいろ、コンテンツは考えられていますし、作られてもいますが、みんなが使えるようになるには、XR機器をスマホのように使うようになってからだと思われます。

 ただ、川上さんがいうように、VRを使うと、五感を使って学習ができるので、いろいろな可能性がありそうです。N予備校の経験から、VRを使うと、学習に集中できる(余計なものが見えない)し、他人の視線は排除できるし、みんなといる一緒にいる感じにはなれるようです。また、コミュニケーション能力も身につくようです。

 いずれにしても、テレワークが普及し、Zoomを誰もが簡単に使うようになりましたが、XRもすぐにと言うわけにはいかないようです。ただ、テレワークも30年前から言われていましたが、コロナ禍になって一変しました。だから、XRもヘッドセットなどハードが安くなり、使いやすくなると同時に、誰でも使えるようになると、爆発的に使われるようになるかもしれません。川上さんが、「XRになると、リアルが大事ということがなくなる。バーチャルのほうが、リアリティがある時代になる」という言葉には、考えさせられました。藤井さんが言うように、XRはあくまでも道具であり、何をやるかはみんなの想像力によるのだと思います。コンテンツで勝負ということになれば、日本も世界を相手に戦える分野であるということでは、皆さん一致していました。(それだけでは、寂しいですが……)

全体の感想

 今回も、展示会の「依頼・相談会」としての役割ははっきりしていますが、現在のWebコンテンツの流れにどんな特色があるのかはよくわかりませんでした。その意味では、コンテンツ企業の象徴のようなKADOKAWAなどが出展しないのがとても残念でした。今年の特色ということは、会場を見てまわったかぎりではよく分かりませんが、特別講演などの印象としては、XRの進展ということだと思います。また、小・中学校に一人一台の端末が配布されるようになって、そのコンテンツと運用をどうするのかがこれからの課題のような気がします。コロナ禍のオンライン学習などを契機にして、いろいろな展開があるかもしれないので、注意が必要だと思いました。

 昨年と同じく、出版界の動向として、講談社の2020年の決算の特色と、2020年度の出版推定販売額について触れておきます。

 「新文化」2021年2月25日の記事に、講談社の2020年度の決算が出ています。「講談社決算『デジタル・版権』が『紙』上回る/売上高1449億6900万円、前年比6.7%増/純利益108億円超に、前年比50.4%増」となっています。

 そして、売上高の内訳として、「製品」が635億0900万円(前年比1.2%減)、「広告収入」55億2200万円(同6.8%減)、「事業収入」714億5700万円(同16.4%増)。「その他」13億0700万円(同22.6%増)、「不動産収入」31億7300万円(同0・4%増)となっています。

 さらに、事業収入の内訳として、「デジタル関連収入」は約544億円(同16.9%増)、「国内版権収入」は約82億円(同0.3%増)、「海外版権収入」は約88億円(同32.9%増)となっています。

 講談社の野間省伸社長は、「デジタル・版権分野を中心とした事業収入が初めて紙媒体の製品売上げを上回り、出版関連収入の5割を超える比率となって、収益構造の変化がより一層明確になった」と語っています。これは、大手出版社に共通していえることだと思います。

 そして、出版科学研究所の調査によれば、2020年出版推定販売額は1兆6168億円で、前年比4.8%増で、2年連続で増加しました。内訳は、紙版が1兆2237億円 で1.0%減、電子版が3931億円で28%増 でした。電子版が4000億円に近づきました。

 ただし、電子版の内訳は、「コミック」が3420億円(同31.9%増)、「書籍」が401億円(同14.9%増)、「雑誌」が110億円(同15.4%減)でした。

 確かに、コンテンツやそれを巡るビジネスの流れが、大きく変化しています。特に、2020年は、コロナ禍の中で、生活様式が一変し、ECやデジタルコンテンツの世界に有利な風が吹いたことが、その流れを加速させています。