AJECオンライン編集講座2024/1月講座「生成AIと編集者のこれから」を聴講して

● AJECオンライン編集講座2024/1月講座
「生成AIと編集者のこれから」を聴講して
講師:藤本 隆(ふじもと・たかし)氏
株式会社ベネッセコーポレーション・ものづくり推進本部
日時: 2025/1/30 (木)18:00~19:30

AJECオンライン編集講座「生成AIと編集者のこれから」を聴講しました。
巷では、生成AIが勢力を増すことによって、商売敵のような存在になるのではないか、と危惧されています。
しかし、生成AIのしくみや得手不得手なことを知ることで、生成AIを謎の存在とみなすのではなく、自分の《大いなる味方にする》という捉え方もできます。

今回の講座は、中身の濃いものでしたので、二回にわたって紹介いたします。

講義の中盤のスライドで、生成AIの得意なことと苦手なことをまとめられていたところが印象に残りました。

《得意なこと》
・与えられた文章の分析・要約・抽出
・一般化されている知識・知恵の生成
・文章の組み立て
《苦手なこと》
・定義や価値観が明示されていない条件による生成
・個別具体に対する正確な情報

《生成AIは入力文を【解析】し、それに対応する文章を【生成】していること》という考え方を念頭に置き、生成AIの得意なところをもう少し掘り下げてみます。

生成AIの得意な【解析】の例としては、要約文を作成することです。
ある長文(以下「入力文」と言います)に対して、「以下の文章を要約してください。」というプロンプトを投げかけると解析結果が出力されます。
みなさんもかつて何度も要約を指示したことがあるかもしれませんが、これは生成AIにとっては得意技なのだそうです。

二つめの得意技は、入力文からある条件のものを抽出することです。
たとえば、以下の通りです。

「以下の文章から、地名(または人名)を抽出してください。」
「以下の文章から、様式美を形容する表現を抽出してください。」
「以下の文章から、ネガティブな表現を抽出してください。」

こういったプロンプトから出力された内容をもとに、校正を効率的にできるかもしれません。
たとえば、一つめのプロンプトからの出力をみて、地名の異体字がきちんと表記されているのかをチェックをすることができます。

三つめの得意技は、分類です。
「以下の文章から、感情表現を抽出し、喜・怒・哀・楽に分けてください。」
というプロンプトに対する回答をもとに、文章の整理をすることができます。

入力文を解析したのちに生成された文章の特性を知ることも大切です。
プロンプトの内容の磨き上げ、ひいては生成文の精度を引き上げるヒントになります。

一方で、生成AIには「一般論にはめっぽう強いが、個別具体には弱い」という一面があります。
たとえば、「数学の偏差値を30から40に上げるためのアドバイスを5つ教えてください。」と問いかけます。

すると、1)基礎の徹底理解 2)計画的な学習スケジュールの作成 3)問題演習の強化 4)理解を深めるための復習 5)適切なサポートの活用 という回答が得られます。

ここに書かれていることは、正しいことですが、一般的なことなので、面白みがなく誰でも書けてしまう文章に思えてしまいます。
そんな一般的な回答から、より深くオリジナルな内容を引き出すときに必要な考え方が、以下の三点となります。

  • 記号を使って構造化する
  • 処理の異なる指示を分割する
  • 指示の内容を具体化する

です。
これらに注意することにより、生成AIの苦手な部分を補うことができ、よりきめ細やかな回答を得ることができます。

今回の講座の内容は密度の濃いものでしたので、次号でもこの講座のレポートをお届けしたいと思います。