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エディット通信(2018年霜月号)
AJEC第5回編集教室 編集者のWEB記事制作に関する「編集技術ノウハウ」聴講レポート
先週の10/25(木),日本編集制作協会が主催する編集教室を聴講しました。聴講レポートとしてまとめました。ご一読いただけますと幸いです。
■2018年度/AJEC第5回「編集教室」(主催:日本編集制作協会)
編集者のWEB記事制作に関する「編集技術ノウハウ」
いま注目されている「東洋経済オンライン」の編集長/山田俊浩氏は,ソフトな雰囲気でご登壇されました。
山田氏は,大学卒業後,東洋経済新報社に入り,記者として,精密業界,コンピューター,IT業界,金融業界などを担当されました。その後,「週刊東洋経済」などの雑誌の編集に携わられたのち,2014年春より,「東洋経済オンライン」の編集長に就任されました。
就任時には月間3000万PVだった「東洋経済オンライン」を,月間2億PVを超える,大手新聞社に匹敵する大型ニュースサイトへ引き上げられました。
このような実績を上げられた山田氏のWEB記事制作の編集技術ノウハウは,目からうろこの内容が満載で、また当たり前だけどなかなかできない努力の積み重ねによるものであることを知りました。
私が,山田氏のお話で興味深く感じたことを3つに分けてまとめました。
1)なぜ編集者の重要性が高まっているのか?
たとえば,
- 書籍化を目指しているネット記事ライターはたくさんいるが,どうしたら書籍化できるかを知っている人
- 「こんな記事を書いてほしい」と頼んで,書いてくれる人はたくさんいるが,この記事をどこに許可を取れば,掲載できるかを知っている人
- ファクトに弱い内容の文章を書くライターだけど,そこをフォローしてあげれば,「いいライター」になるかもしれない……と発見できる人
……など,微に入り細を穿った判断や対応ができる人,それぞれの能力をつなぎ合わせて,大きく膨らませる力を発揮できる人こそが,「編集者」であると山田氏は言われます。
反対の見方をすると,一つのことに特化した能力を発揮する人が多いWEB記事業界にあって,「編集者」が重要な位置をしめていることを示唆されました。
2)WEB編集に必要なコツとは?
- 「東洋経済オンライン」は,タイトルを20文字と決めている。
→長すぎても短すぎてもいけない。
- 「理由」「訳」「事情」で終わるタイトルのPVがよい。
→他社もその言い回しをまねてきている。
- エバーグリーンコンテンツ(いつも最後まで読んでもらえる記事)を作ることが大事。
→読み始めて,魅力のある記事であれば,長くても最後まで読んでもらえる。
→「タイトル」「写真」「書き出し」がよいものは読んでもらえる。
→来年になったら古くなる表現は避ける。(「一か月前」,「●●首相は…」など)
3)読者本位の徹底とは?
- タイムリーな記事の提供を心がける。
→読者が求めている記事をヒアリングする機会を年に2回行っている。
- 凝らないデジタルスキン(フォーマット)にする。
→1ページに1つしか見出しを入れない。
→クリックして写真を大きく見せることも禁止した。
→定型化は,「これは東洋経済オンラインだ」と思わせるインパクトがあるので,大切にしている。
- テキストベースにする。
→読者が内容に集中できるようにするため。
山田氏のお話が終わったあとの質疑応答も密度の濃いものでした。
その中で山田氏は,
「『東洋経済オンライン』を知ってもらうことより,まずは『東洋経済オンライン』に来てもらえることが大切。いつも読者本位の考え方でいきたい」
と言われたことが,この日の講演内容のすべてを物語っているようでした。
今回の講演は,あっという間に予約が満席になったと聞いています。1時間半にわたる山田俊浩氏の話は,その理由がわかるような内容でした。