エディット・メールマガジン/バックナンバー
エディット通信(2021年立春号)
■AJEC編集講座「編集制作工程と編集者の役割」を聴講して
講師の藤本隆氏は,ベネッセコーポレーションのグループ会社プランディットにて,長年編集業務に関わられながら,ベネッセグループ各社向けの社員育成研修講師を務めていらっしゃいます。
「印刷と組版の歴史」から始まって,写植とガラス文字盤について,オフセット印刷のしくみに関して,さらには,1冊の本ができるまでのきめ細やかなプロセスの解説まで,多岐にわたる充実した講演内容でした。画面に映し出されたパワーポイントの内容はシンプルかつ整理されたもので,聞くものを飽きさせない工夫が各所でなされていて,すんなりと頭に入ってくる講義でした。
いくつか,印象的なお話を紹介させていただきます。
オフセット印刷のしくみ
「刷版を巻き付けた「版胴」(この上部には水のローラーとインクのローラ―が接触している)と刷版のインクを転写するゴム製の「ブランケット胴」(下部に紙をブランケット胴に押し付ける圧胴と接している)がそれぞれ接して回り,ブランケット胴と下部の圧胴との間に印刷用紙を通して,そこに印字されていく様子を,動きをつけて解説。
編集者の仕事で大切なのは,「企画と規格」
- ふたつの「キカク」がおろそかだと業務はうまく回らない。
- 「企画」とは,セグメンテーション,見せ方,メッセージなどを検討すること。
- 「規格」とは,具現化のための仕様,ルール,予算,制作体制,制作フローなどを検討すること。
- どんなに見ばえのよい規格の書籍でも,企画が悪ければ読まれない。また,どんな優れた企画でも,的確に具現化されていなければ買われない。
- 編集プロダクションは,「規格」を確実に遂行することが求められている。
編集者は,様々なプロフェッショナルに,扇状に囲まれて仕事をしている
- 「取材先」「カメラマン」「執筆者」「イラストレーター」「デザイナー」「組版会社」「校正者」「印刷会社」と連携しながら,1冊の本に仕上げる。
- 【扇の要】が,編集者の立ち位置。
- クライアントからの求めに応じて,「扇の要」となる編集者が,各プロフェッショナルとのやりとりを行い,問題解決する役割を担う。
後工程はお客様
- 業務を引き継いで,次の工程に関わる人のことを「お客様」だと思うこと。
- お客様(その道のプロフェッショナル)に,どういった伝え方,どういう材料を示せば,お客様が力を発揮してくださるかを考える。
編集者の時短術
- 自分の仕事の後始末を仕事と思っていないか?
→アドレナリンは出るが,非効率的なことをしている。
- 立ち止まって,「やり直し・手戻りのない仕事とは?」 を考えることが時短につながる。
一般的な編集業務の解説とは一線を画し,藤本隆氏の長年のご経験が裏打ちされた臨場感と温かみのある1時間半のご講義でした。