カラオケが嫌いでもよい。歌うことが苦手でも構わない。その場の雰囲気を盛り上げようとする姿勢があるかどうか。編集者はコーディネーターである。みんなを喜ばせ,その気にさせて,場を作っていくのだ。編集者は太鼓持ちでもあり,芸者でもあり,演出家でもあるのだ。
「編集者イコール板前さん」論はよく耳にする。私もこの本の最初に述べている。しかし「編集者イコール太鼓持ち」または「編集者イコール芸者」という見方はあまり聞いたことがない。しかし三者とも相手を喜ばせる職業だ。
いままで編集業は時代の先端を行く職業だと言ってきた。実際はほんの一部の編集者のことを指す。多くの編集者は,自分が表舞台に立ってリーダーとして旗を振ったり本を書いたりするわけではない。みんなほかのだれかにやってもらう仕事だ。それでいて自分の思いどおりになるようにいろいろな仕掛けをする仕事だ。黒子であり影武者でもあるだ。
太鼓持ちも芸者も旦那を喜ばす芸を持っている。芸は技術だ。旦那とは著者であり読者でもあるのだ。著者と読者を喜ばす仕事−−まさに編集業だ。カラオケも1つの芸である。