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エディットお役立ちレポート

2021-5-25

オンライン講座「漢字の歴史と文字コード」

講師:藤本 隆(ふじもと たかし)氏  プランディット 編集事業部 編集長

 編集講座のBコースで、藤本さんの3回目の講座です。今回は、当初のテーマは「漢字の歴史と文字コードとフォント」でしたが、時間の都合で、フォントについては次回になりました。その代わり、漢字の歴史と文字コードにつきましては丁寧に説明していただきました。この場合の漢字と文字コードというのは、あくまでも日本語の漢字であり、日本語としての漢字の文字コードの話です。最終的には、現在Unicodeに統一されています。

 今回の講座は、編集の仕事の中のDTP組版に関係した話になります。文字の扱いについては、正しい知識を持つことによって、トラブルを解決し、先手を打った制作ができるようになると話されていました。詳しい内容につきましては、AJECのHPで紹介される講義内容などで確認してもらうことにして、今回も藤本さんの講座の流れをスライド順に簡単に紹介しておきます。

講義内容

感想

 今回の漢字の話と文字コードの話を聞きながら、なんだかとても懐かしい気持ちになりました。というのは、我々の世代(団塊の世代)は、漢字は当用漢字の時代だったし、文字コードについては、MS-DOSの時代でShift_JISができたばかりでした。もちろん、そのころ、例えば銀行の口座名のコンピュータ処理の場合は、半角コードが主で、決められた書式にカタカナで書き、濁点や半濁点は1字分を取って書いていました。そして、少しパソコンでプログラムなどをいじるときは、すべてASCIIコードで処理していました。そんなわけで、藤本さんの戦後の漢字施策やコンピュータで扱う文字の符号化の話は、私たちの体験そのものでした。出版社に勤め始めたのは半世紀前でしたが、そのころは写植の文字盤と付き合っていました。

 講座は、前半が日本語の中の漢字の表記の歴史で、その中でも戦後の国字政策について詳しく触れられていました。当用漢字の時代は漢字を制限する方向でしたが、常用漢字の時代になると、それが緩められ、またコンピュータの進化等でたくさんの漢字を使えるようになって、少しずつ増加していく様子が詳しく話されていました。特に、文科省と法務省および通産省という3つの省の綱引きのなかで、漢字が少しずつ増え、また字形が多様化して混乱が生じたことなどを丁寧に説明されていて、思わず過去の失敗などを思い出しました。この辺の混乱が現在も残っているものもあります。

 また、漢字を制限しようということで、制限外の漢字を別漢字で書き換えの例示を国が示すことによって、もとの意味が誤解されるような例を紹介がありました。特に、「編輯」が「編集」になることによる意味の変化は面白かったです(編輯の「輯」には、材料を集めると言う意味があったが、「集」はただ集めるという意味である)。さらに「障害」は「障碍」の書き換えで、現在「障害者」という言葉は使わず、「障がい者」と表記することが多くなった話など、興味深い例示がありました。

 講座の後半は、その漢字をコンピュータでどう表していくかという、文字規格の策定についての話でした。どんな文字を収めるのかがコンピュータの性能との関係で増加していく様子や、どんな方式で収めるのかという符号化の方式がUnicodeによって拡張されていく流れが、分かりやすく説明されていました。旧JISと新JISとの字形の変更と再変更の話では、「葛󠄀飾区」の「葛󠄀」や「葛󠄀城市」の「葛󠄀」の例示が興味深かったです。

 講座の内容紹介では、漢字の歴史と文字コードの進化の羅列になっていますが、藤本さんは、ところどころ丁寧にかつ興味深い実例をあげて説明されていて、あっという間に1時間半が過ぎてしまったような印象でした。

 私たちが使っている漢字はどのように標準化されていったのかという漢字の歴史と、コンピュータで漢字を使うとき、なぜUnicodeのようなものができているのかがよく分かる講座でした。こういうことを知っておくことは、編集作業がデジタル化され、常にコンピュータ上の文字表現に依存している現状では、編集者の必要な基本的な教養だと思いました。

参考文献
安岡孝一著『新しい常用漢字と人名用漢字 漢字制限の歴史』(三省堂2011/3/25)
矢野啓介著『プログラマのための文字コード技術入門 』(技術評論社2018/12/28)